シミができるプロセスと対策
シミは、なぜできるのでしょうか。
そして、一度できたシミは、なぜなかなか消えないのでしょうか。
一般に「美白」というと、メラニンの産生を抑えることが注目されます。
ただ、シミができる仕組みを見ていくと、関わっているのは「メラニンをつくる」という一つの段階だけではありません。
肌の中では、
紫外線や炎症などの刺激を受ける
↓
メラニンをつくる
↓
周囲の表皮細胞へ受け渡す
↓
表皮の中にメラニンが増える
という流れが起きています。
そして、長く残るシミでは、単に古いメラニンが残っているだけではないこともわかってきました。
シミができている部分では、メラノサイトだけでなく、周囲の表皮細胞や真皮の環境にも変化がみられ、色素沈着が続きやすい状態になっている可能性があります。
まずは、「なぜシミができるのか」から見ていきましょう。
まず知っておきたいこと──「シミ」の種類は一つではありません
一般に「シミ」と呼ばれているものには、
• 紫外線との関係が深い日光黒子
• 女性に多くみられる肝斑
• ニキビや皮膚炎などのあとに残る炎症後色素沈着
• そばかす(雀卵斑)
などがあります。
それぞれ成り立ちは異なるため、すべてのシミを一つの仕組みだけで説明することはできません。
このページでは、まず多くの色素沈着に共通する「表皮にメラニンが増えて濃く見えるまでの基本的な流れ」を説明します。
そのうえで、紫外線との関係が深く、長く残りやすい「日光黒子」の研究も参考にしながら、なぜシミが消えにくくなるのかを考えていきます。
なぜ、シミができるのか
|シミができるプロセスのイメージ画像|(準備中)大きく整理すると、次のような流れです。
1. 紫外線や炎症などの刺激を受ける
↓
2. メラノサイトでメラニンが多くつくられる
↓
3. メラニンが周囲の表皮細胞へ受け渡される
↓
4. 表皮にメラニンが増え、その部分が濃く見える
順番に見ていきましょう。
1. 紫外線や炎症などの刺激を受ける
メラニンをつくる細胞を、メラノサイトといいます。メラノサイトは、表皮の一番下にある基底層に存在しています。
ただし、紫外線を受けたときに反応するのは、メラノサイトだけではありません。
周囲の表皮細胞も紫外線による変化を感知し、メラノサイトに「メラニンをつくる」方向へ働きかけるさまざまなシグナルを出します。
人の皮膚を対象とした研究では、UVBを受けた表皮で、メラノサイトの働きに関わる複数の物質が増えることが示されています。
つまり、シミの始まりは、
メラノサイトだけが突然活発になる
というより、
刺激を受けた肌から、メラニンを増やす方向へさまざまな合図が送られる
と考える方が実態に近いのです。
また、紫外線だけでなく、炎症も色素沈着のきっかけになります。
ニキビや皮膚炎、傷などが治ったあとに色が残る「炎症後色素沈着」は、その代表的な例です。
2. メラノサイトで、メラニンがつくられる
メラノサイトの中には、メラノソームと呼ばれる小さな器官があります。メラニンは、このメラノソームの中でつくられます。
ここで大切なのは、
メラニンは、単なる「シミの原因物質」ではない
ということです。
メラニンには紫外線を吸収し、皮膚の細胞を紫外線による損傷から守る働きがあります。
また、メラニン量の多い皮膚ほど、同じ紫外線を受けたときのDNA損傷が少ない傾向も報告されています。
つまり、
紫外線を受ける
↓
紫外線に対する防御反応の一つとして、メラニン産生が高まる
という仕組みには、生理的な意味があります。
メラニンそのものが悪いのではありません。
問題になるのは、紫外線や炎症などの刺激が繰り返され、一部の場所でメラニンが多い状態が続くことです。
3. つくられたメラニンが、周囲の表皮細胞へ受け渡される
メラノサイトでつくられたメラニンは、その細胞の中だけにとどまりません。メラニンを含んだメラノソームは、メラノサイトから周囲の表皮細胞へ受け渡されます。
この「受け渡し」も、肌の色を決める大切な過程です。
つまり、色素沈着を考えるときは、
どれだけメラニンをつくられたか
だけではなく、
その後、どれだけ周囲の表皮細胞へ受け渡されたか
も重要なのです。
このメラノソームの受け渡しが、皮膚の色素量に関わることも研究から確認されています。
4. 表皮にメラニンが増え、その部分が濃く見える
メラニンを受け取った表皮細胞は、少しずつ肌表面へ移動していきます。その間に、メラニンの一部は表皮細胞の中で処理されます。表皮細胞の中に、メラノソームを分解する仕組みが存在することも研究からわかっています。
こうした表皮の入れ替わりや細胞内での処理によって、表皮にあるメラニンは少しずつ減っていきます。
では、なぜ一部の色素は消えずに「シミ」として長く残るのでしょうか。
ここが、シミを考えるうえで重要なポイントです。
なぜ、シミは消えにくくなるのか
「シミがなかなか消えないのは、ターンオーバーが遅くなって、古いメラニンが排出されないから」と説明されることがあります。
表皮の入れ替わりがメラニンの減少に関係していること自体は間違いではありません。
しかし、現在の研究から考えると、それだけでは長く残るシミを十分に説明できません。
特に日光黒子では、
古いメラニンが残っているだけではなく、シミができている部分の皮膚そのものに変化が起きている
ことがわかってきています。
大きく、3つの理由から考えてみましょう。
理由1:メラニンをつくる刺激が続いている
まず考えたいのは、古いメラニンが減っていく一方で、新しいメラニンもつくられ続けている
ということです。
紫外線を繰り返し受ければ、皮膚からメラノサイトへ送られるシグナルも繰り返されます。
日光黒子では、シミがない周囲の皮膚と比べ、色素形成に関わるシグナルが活発になっていることも報告されています。
そのため、新しいメラニンの供給が続けば、色素沈着も残りやすくなると考えられます。
これは、すでにシミがある場合にも紫外線対策が重要な理由の一つです。
理由2:シミの部分の皮膚が、色素沈着の続きやすい状態に変化している
日光黒子の研究からわかってきたのが、この点です。シミができている部分では、メラニンをつくるメラノサイトだけでなく、その周囲の表皮細胞にも、シミのない皮膚とは異なる変化がみられます。
さらに、影響しているのは表皮だけではありません。
その下にある真皮からも、メラノサイトの働きに影響するシグナルが送られており、日光黒子では、こうした真皮側の環境にも変化がみられることが報告されています。
つまり、長く残るシミ、とくに日光黒子は、
「古いメラニンが残っているだけ」
ではありません。
メラノサイトだけでなく、周囲の表皮細胞や真皮まで含めて、色素沈着が続きやすい局所の皮膚環境がつくられている可能性があるのです。
こうした変化も、一度できたシミが消えにくい理由の一つと考えられます。
理由3:炎症によっては、色素が表皮より深いところに残る
炎症後色素沈着では、さらに別のことが起こる場合があります。炎症による影響が主に表皮にとどまれば、色素も主に表皮に存在します。
一方、炎症が強く、表皮と真皮の境界付近まで影響すると、メラニンが真皮側に入り込み、そこで細胞に取り込まれて長く残ることがあります。
炎症後色素沈着を調べた研究でも、主に表皮に色素があるタイプと、真皮にも色素がみられるタイプが確認されています。
そのため、
「ターンオーバーを促せば、すべてのシミが早く排出される」
とはいえません。
シミの種類や、メラニンが存在している場所によっても、薄くなりやすさは変わります。
「ターンオーバーを速めれば、シミが消える」とは限らない
表皮では、一番下で生まれた細胞が少しずつ上へ移動し、最終的に角層となって脱落していきます。そのため、表皮が本来の流れで更新されることは、表皮にあるメラニンが減っていくうえでも大切です。
しかし、
ターンオーバーは、速ければ速いほどよいものではありません。
そして、
シミ=ターンオーバーが遅くなった状態
とも言い切れません。
日光黒子では、メラニンの量だけでなく、表皮の構造や表皮細胞の状態、さらに真皮からの影響など、複数の変化が確認されています。
ですから、
「メラニンを早く出したい」
という理由で、古い角質を無理に剥がしたり、強く洗ったりすることには注意が必要です。
肌に炎症を起こせば、それ自体が新たな色素沈着のきっかけになることがあるからです。
シミ対策で大切なのは、表皮の入れ替わりを無理に速めることではなく、本来の流れを邪魔しないことです。
では、シミ対策では何をすればよいのでしょうか
ここまでの仕組みから考えると、シミ対策では大きく3つのことを考える必要があります。1. メラニンを増やす大きなきっかけである紫外線から守る
2. 炎症につながる刺激をできるだけ増やさない
3. 美白成分の役割を知る
順番に見てみましょう。
1. まず、紫外線から守る
シミ対策で最も基本になるのが、紫外線から肌を守ることです。紫外線は、
肌が紫外線を受ける
↓
メラノサイトへシグナルが送られる
↓
メラニン産生が高まる
という、シミ形成の出発点に関わります。
また、長年にわたる紫外線曝露は、メラノサイトだけでなく、その周囲の表皮細胞や真皮の環境にも影響します。
日光黒子が、紫外線にさらされやすい部位に生じやすいこととも一致します。
紫外線から守る意味は、
「これから新しいシミをつくらないため」だけではありません。
すでにある日光黒子についても、夏季の日光による色の濃化をSPF30の日中用製品で抑えられた研究があります。
つまり、
新しくメラニンを増やさない。
今ある色素沈着をさらに濃くしない。
その両方の意味で、紫外線対策はシミケアの土台になります。
2. 肌に炎症を起こす刺激を増やさない
もう一つ大切なのが、肌を繰り返し荒らさないことです。シミを早く薄くしたいからといって、
必要以上に洗う。
角質を頻繁に剥がす。
肌に合わない化粧品を我慢して使い続ける。
こうしたケアによって炎症が起きれば、かえって新たな色素沈着につながる可能性があります。
炎症のあとに色素が残る「炎症後色素沈着」があることからも、炎症を繰り返さないことは、色素沈着を増やさないためにも重要です。
シミ対策では、
何を足すかだけでなく、余計な刺激を増やさない
という視点も大切です。
3. 美白成分でできること、できないこと
ここで、美白成分をどのように考えるかも見ておきましょう。美白成分は、メラニンの生成を抑えるなど、シミができていく過程に働きかけ、新たな色素沈着を防ぐことを目的としています。
つまり、美白成分が働きかけるのは、色素沈着が生じる過程の一部です。
一方、長く残っている日光黒子などでは、メラノサイトだけでなく、周囲の表皮細胞や真皮にも変化がみられます。
そのため、美白成分を「できているシミを消すもの」と考えるのではなく、新たな色素沈着を増やさないための一つのアプローチとして捉えることが大切です。
角層をすこやかに保つ意味
HEMUEがスキンケアで大切にしているのが、角層をすこやかに保つことです。ただし、
「角層を整えればターンオーバーが速くなり、シミが排出される」
という意味ではありません。
角層は、乾燥や摩擦など、外からの刺激に対するバリアの最前線にあります。
その角層を、
洗いすぎる。
こする。
剥がしすぎる。
乾燥させる。
こうしたことを繰り返せば、肌を荒らし、刺激や炎症を起こしやすくなります。
だからこそ、
角層を無理に動かそうとするのではなく、肌が本来行っている表皮の形成や入れ替えを邪魔しない。
これが基本です。
角層をすこやかに保つこと自体が、すでにできた日光黒子を直接消すと証明されているわけではありません。
それでも、シミを薄くしようとして角層を荒らし、新たな刺激や炎症を増やしてしまっては本末転倒です。
角層をすこやかに保つ意味は、シミを直接消すことではなく、肌を守る働きを損なわず、新たな色素沈着につながる刺激をできるだけ増やさないことにあります。
シミ対策は、「できたメラニンを早く出す」だけではない
ここまでをまとめてみましょう。シミは、
紫外線や炎症などの刺激を受ける
↓
メラノサイトが刺激される
↓
メラニンが多くつくられる
↓
メラニンが周囲の表皮細胞へ渡される
↓
その部分が周囲より濃く見える
という流れで生じます。
そして、長く残るシミ、とくに日光黒子では、
新しいメラニンが多くつくられ続ける
ことに加えて、
シミができている部分の表皮細胞や真皮にも変化が起こり、色素沈着が続きやすい環境になっている
可能性があります。
だからこそ、
「できてしまったメラニンを、できるだけ早く外へ出す」
ことだけを考えるのではなく、
なぜ、メラニンが増え続けるのか。
そのきっかけを、どう減らしていくのか。
という視点が大切です。
そのために、スキンケアでまず取り組みたいのは、
紫外線から守る。
炎症につながる刺激を増やさない。
角層を荒らさない。
シミだけを追いかけて肌を動かそうとするのではなく、毎日のケアで肌を守りながら、新しい色素沈着を増やさない。
それが、皮膚の仕組みから考えるシミ対策の基本です。
シミだと思っていても、自己判断しない方がよいものもあります
見た目が「シミ」に見える色素斑が、すべて同じものとは限りません。急に大きくなったもの、形や色が変化してきたもの、輪郭が不規則なもの、出血やかさぶたを繰り返すものなどは、化粧品で対処しようとせず、皮膚科で確認してください。
また、日光黒子、肝斑、炎症後色素沈着などでは適切な対応も異なります。
長く続くシミを積極的に改善したい場合も、まず何の色素斑なのかを確認することが重要です。
参考文献・根拠資料
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人の皮膚で、メラニン量と紫外線によるDNA損傷との関係を調べた研究。
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日光黒子では真皮の線維芽細胞から出る因子も色素形成に関与していることを調べた研究。
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日光黒子を組織・分子レベルで調べ、メラノサイトだけでは説明できない局所的な皮膚環境の変化を検討した研究。
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炎症後色素沈着に、主に表皮に色素が存在するタイプと真皮にも色素がみられるタイプがあることを示した研究。
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SPF30の日中用製品の継続使用により、夏季の日光黒子の色の濃化を抑えた研究。
10. 厚生労働省:医薬部外品の効能・効果に関する公表資料
薬用美白化粧品で用いられる「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」という効能表現を確認する資料。
免責・注意事項
• 本記事はスキンケアに関する一般的な情報提供であり、医療行為の代替ではありません。症状がある方、治療中の方は医師(皮膚科)の判断を優先してください。• いずれの化粧品でも、体質・肌状態によって合わない場合があります。赤み、かゆみ、刺激、悪化などが出た場合は使用を中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください。
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初版公開:2026年最終更新日:2026/08/18
